ウィスキーカタログ ”ミクターズ”MICHTER’S
1700年代に誕生したアメリカ最古の蒸留所。
英国飲料業界誌ドリンクス・インターナショナル、ベストトレンディングランキング1位に輝く。
カクテルとしても使用しやすいとバーテンダーの間でも評判。
バーボンの歴史
スコットランドからの移民、エライジャ・クレイグ牧師がつくったとされる。
自由の国アメリカでもバーボンと呼ぶには幾つかの決まりがある。
・原材料にとうもろこしを51%以上使用しなければいけない。
・使用する樽は、内側を焦がしたオークの新樽を使い熟成させなければいけない
なぜ、新樽でなければいけないのか?
「バーボンの歴史」監修の白井慎一氏は語る。
一言でいうと、林業の人の雇用を守るため。
アメリカらしいスクラップ&ビルドの考えがここにある。
クーパーズ(樽職人)の仕事を守るということ。
それで新樽を焼いたものを一度しか使わないという法律ができている。
2,3回目は、エキスが出てるので、ファーストフィルを使うことでバーボンの味わいがでるといわれている。
このミクターズは歴史から消えかけたバーボンである。
1753年に創業、ペンシルベニアウィスキー会社。
当時はシェンクス会社、ボンガーバーズ蒸留所といわれ現在のミクターズブランドの前身として知られている。
1989年、旧ミクターズ蒸留所は一度破産を宣言し、事業を引き継ぐ人があらわれなかったため一度見捨てられたブランドとなった
しかし、ファンは多く、一人の人物がたちあがる。
”ミクターズがなくなるのは大いなる損失だ”
と現オーナーのマリオッコ氏がわずか245ドルでミクターズの商標を取得する。
2012年にウィスキー蒸留の認可を得る。
2014年に蒸留器、ダブラーを導入し、自分たちのスピリッツを作れるように。
現在、ケンタッキーにルイビルのシャイブリー蒸留所、スプリングフィールドの自社農場、ルイビルフィートネルソン蒸留所を構える。
ミクターズは、最高のアメリカンウィスキーを目指す。
それは、あらゆるコストを顧みず、全ては最高品質のウィスキーをつくること。
- こだわりの原材料
・遺伝子組み換えではない最高品質の穀物を調達
・コーンはでんぷん質豊富なイエローデントコーンを取り寄せる
・ライや大麦麦芽も同じ
コーンは甘さを、ライはスパイシーさとフローラルをもたらす。
発酵槽も、名高いヴァンドームカーパー&ブラス・ワース社製を用いる。
オール銅精のスチルを使いクリーンなスピリッツを生み出す。
独自の新樽を使う
最高品質のホワイトオークを18~60か月自然乾燥させる。
自然乾燥中、木には様々な変化が起きる。
例えば、様々な菌類が木に触れると、タンニンの成分を分解し苦み、えぐみの発生原因を取り除くことができる。
チャーリング(内側を焦がす)の前に弱火でゆっくり加熱するトースティングを行う。
オーク材をトースティングすると木を構成する分子が壊され、アロマや味わい、色調をもたらす成分がでてくる。
その後チャーリング。
糖分のカラメル化が促進され更なる味わい色調、アロマをもたらす。
トースティングとチャーリングでウィスキーがより木の奥まで浸透しチャーリングのみをした樽よりリッチな味わいとなる。
樽詰め
バーボンの定義、アルコール度数は62.5%以下で熟成したもの。
ミクターズは全てのスピリッツを51.5%で樽詰めする
業界基準よりかなり低い度数。
より多くの樽を調達し、保管庫が必要となりさらにコストがかかる。
しかし、この方法によりリッチでスムーズなあたたかみがあるウィスキーを
生み出すための様々な反応を促すことができる。
ボトリングする時に、あまり水で希釈しないですみ熟成感がそのまま維持できる。
貯蔵庫の環境
標準的な4階建てで各フロアに3段積みのスチールラックが備えられている。
4フロアすべてで冬はヒートサイクリングを活用していて、樽の中の液体を活発に動かし、全ての樽が同様に熟成を経るよう努めている。
温度が上がるとウィスキーは木の道管へと動き、下がると木の内部から樽の中へと戻ってくる。
この作用に注目し冬の間ウィスキーと木の相互作用を活発にするため、ヒートサイクリングを活用し熟成の質を高めている。
普通熟成で6%のウィスキーエンジェルシェアや樽にしみこみ失われる。
ヒートサイクリングでさらに多くのエンジェルシェアが生まれるが、味わいは非常にリッチで美しいものになる。
厳選された瓶詰
ミクターズの製品は全て、シングルバレルかスモールバッチ
シングルバレルは非常に優れた樽で一貫した品質が求められる
またわずか20樽分でつくられる製品をスモールバッチと呼んでいる
真のスモールバッチをつくるには一貫性がありブレのない品質が求められる
コストを度外視したミクターズは世界中で愛されている
もしより良いアイディアがうかんだらやってみる、コストは二の次なのだ
白井氏のおススメとまとめ
白井氏おススメは、ミクターズUS☆1 ライウィスキー
ライウィスキー51%以上のお酒で、コーンやモルトの配合がある。
スパイシーの中に甘さも残り、複雑、飲み口と後味が違い面白い。
- ウィスキペディア、オリジナルバックラベル仕様のミクターズの限定品「バレルストレングス・ライ」が9月に販売決定。
キャラメルの甘さ、黒砂糖のようなスパイシーさ、柑橘系やフローラルなテイストも感じられる。
スムーズであたたかみのあるウィスキー。
マスター・ディスティラー、ダン・マッキー氏は語る
チームは最も大切な財産
化学者・微生物学者、科学技術者など長い経験を持つ人が多数働いてくれていて、チーム全員を尊敬しています。
- ウィスキーとは?
人々をつなぎ束ねていくものです。
経験や思い出を豊かにしてくれる、美しく楽しいものです。
作り手としてそれを共有できることは限りなく喜びです。
「バーボンの歴史」監修 白井慎一氏
僕にとってウィスキーは友人。
つらい時も楽しい時も常にそばにいてくれる。
お酒が飲める歳になってからは、ずっとそばにいてくれる友人で大事にあつかっています。
ウィスキーカタログ ”ブッシュミルズ”
アイルランド島、一年中、気温が穏やかで自然豊かな地域。
アイリッシュウィスキーはどんな特徴があるのか?
条件は、
- 原料はアイルランド共和国、北アイルランド内の穀物を使用
- 麦芽の天然酵母による糖化、酵母発酵を行うこと
- アルコール度数94.8%以下で蒸留する
- 木製の樽で3年以上熟成すること
400年以上の歴史を持つブッシュミルズ蒸留所について。
マスターディスティラー、コラム・イーガン氏が説明を行う。
1608年、ライセンスを取得する。
いくつかの建物は1800年代後半に建てられた。
その歴史には地理的条件が大きく影響しているという。
蒸留所がここにある理由の一つに、海、港が近いということが挙げられる。
簡単に樽やウィスキーが運び出せ、田舎だったので大麦を育てるのに適した環境だった。
地元で育てられ蒸留所まで運ばれた。
仕込み水は?
数百年も前になぜここに蒸留所が建てられたかというと、水源にある。
その泉は蒸留所から5kmほどの場所に湧き出ている。
水は玄武岩の上をとおる。玄武岩は硬く、これで作られた大地が世界遺産として有名なジャイアンツ・コーズウェイ(巨人の石道)と呼ばれるもの。
その際、あるミネラル分が得られる。これが、ブッシュミルズの味に関係するよう。
そして、MX株といわれる酵母を1バッチあたり65キロ入れる。
発酵には50時間かかり、最終段階ではアルコール度数は8%になる。
蒸留へ
蒸留器の形状も重要。
下部が球根のようで、ネックは細長くなっているのがとても特徴的だ。
発酵後アルコール濃度が8%になった液体を1回目の蒸留器に入れる。
1回目の蒸留でアルコール濃度は22%になる。
2回目の蒸留では70%、3回目で85%になる。
その時には、フローラルでスムースな豊かな味わいになっている。
アイルランドでは3回蒸留が習慣で400年受け継がれてきた。
熟成
熟成のフェーズはとても重要なので、質の高い樽を準備しなければいけない。
蒸留所が継承する味わいを強調するには、世界に樽を探すために足を運ぶ。
アメリカからはバーボン樽を。
250リットル樽で、カラメルとバニラの香味をもたらす。
スペイン・ヘレスのアントニオ・パエスファミリーからシェリー樽を仕入れている。
彼らはブッシュミルズの特注の大きな樽をつくってくれる。
大きさは500リットルで大胆な夏のフルーツの香りをもたらしてくれるよう。
同じものをいれても、樽によてっては全く違う味になる。
規定では3年以上だが、ブッシュミルズでは最低4年は熟成させる。
最長は制限がなく、幸いなことに1975年ものがまだ樽入っている。
14か所に23万の樽が眠っている。
樽詰め
1分間に150本という速さで瓶詰されていく。
レーザーシステムで、すべてのボトルが管理されており世界のどこで販売されるかわかるようになっている。
ブッシュミルズの好きなところは、マスターディスティラーである自分がすべての工程を管理できること。
それは、グレーン・トゥ・グラスと呼ばれる。
穀物からグラスへ、全ての作業を一貫して行うという意味。
製造全ての工程を一か所で行われることは珍しい。
フルーティでフローラルな味わい。
のどを通るときとてもスムースだが口にもどってくるとリッチで大胆かつフルーティな特徴が広がる。
頬の内側にはハチミツのような味もする。
これがブッシュミルズ!
ウィスキーにまつわる謎
発祥の地、問題。
バーテンダー同士が議論を交わす。
スコットランドとアイルランドの最短距離は20㎞。
しかしウィスキーの特徴は大きく異なる。
スコットランドには150もの蒸留所があり、多種多彩なウィスキーがある。
一方アイルランドはノンピート麦芽に伝統の3回蒸留でクリアなウィスキーが特徴。
民族的には兄弟意識は強い。
どっちがお兄ちゃんなのか、というような問題。
1608年のブッシュミルズより古い文献はあるのか?
1492年、スコットランド王室財務省の記録には「王命により修道士ジョン・コーに8ボルのモルトを与えてアクアヴィテを造らしむ」という記録がある。
さらに1172年に、イングランド王ヘンリー2世がアイルランドに侵攻した際、現地で「すでに大麦から蒸留した酒が飲まれていた」という逸話がある。
文献でみるべきか、逸話で考えるべきか、、、
さらにラテン語の”アクアヴィテ”がアイルランドにわたってウィスキーの語源となった”ウシュクベーハー”となったといわれている。
言葉のルーツからみてもアイルランドに軍配あがるか。。
仮にスコットランドがウィスキー発祥の地ならアイルランドにピート製法が伝わっていないとおかしい、のではないか。
ブッシュミルズのコラム氏はこう語る。
それはブッシュミルズの地でしょう。
1076年にはウィスキーを作っていた記録が地元に残っている。
ということは1000年前からウィスキーが存在していたことになる。
わたしはこのエリアでウィスキーが始まったと信じています。
結論はまたいつか。。。
コラム氏にとってウィスキーとは、、、
私の人生です、大好きなことを仕事にできて本当に幸運です。
ブッシュミルズの伝統もウィスキーも大好きです。
何世紀もの間受け継がれてきた品質に愛情があります。
マスターディスティラーを通じて伝統が継承されてきた。
今は私で、次の人にも同じものを継承しなければいけない。