25話
謎の美女、三郎丸ファーストエディション・マジシャンを頼む。
それは、最新のシングルモルト。
蒸留所の特徴はマッシュタン。30年前の蒸留器を一部を改良したポットスティルで生まれたもの。
さらに鋳造製のポットスティル。低コスト、短納期、高寿命、高品質でカスタマイズも簡単にできるものを開発したという。
改造したポットスティルが稼働した時間は1年くらい。
もう同じ蒸留器が使えないとなると、同じ味を再現できないという意味で五郎丸・ファーストはまた貴重なウィスキーということになる。
場面は変わって富山、砺波(となみ)平野。豊かな水に恵まれた土地。
五郎丸蒸留所を設立した若鶴酒造は老舗のメーカーだが、ウィスキー業界の注目を浴びたのが、鋳造製ポットスティル”ZEMON”の存在だ。
三郎丸ファーストをリリースし大きな一歩を踏み出した。
1952年、曽祖父、稲垣小太郎氏がウィスキーづくりを始めた。
5代目稲垣貴彦氏がクラウドファインディングで老朽化した蒸留所を理想の蒸留所へと変化させた。
使用するモルトは全てピーテッドタイプ。
フェノール値は50ppm(ヘビリーピーテッド)を用いる。
アイラのピートのみを用いる。
理想は、70年代のアードベッグ。
目指すは、2代目が生み出したスモーキーな味わい。
糖化のマッシュタンは三宅製作所製。
制御盤は稲垣氏のこだわりを反映させるべく自社で製作したという。
発酵酵母は、ウィスキー酵母とエール酵母を2種類用いる。
もろみは、乳酸菌の発酵を促すため、木桶へと移される。
蒸留所の一番奥に佇むのは世界初の鋳造製ポットスティル”ZEMON”。
バーにてファーストを飲む女性。
テイスティングは、スモーキィでフルーティ柑橘、オイリーで重厚、さらにはっきりとした香味を感じられる。
旧世代の残滓といえるオフフレーバーが減ってるようにも感じる。
2基のポットスティルは初留、再留ともに同じ働きをする。
首が太くラインアームも短いので非常にリッチな酒質を得られるようになっている
再留はおだやかに熱せられるが、初留は、直接蒸気吹き込み兼間接加熱。日本古来の蒸留方法と、ウィスキ―の方法を組み合わせた加熱方法をとる
江戸初期から続く高岡銅器。
砺波の400年間培われてきた胴鋳物の技術は世界に誇る。
銅製ポットスティル製作には、梵鐘(寺院の釣り鐘)とポットスティルが似てることからヒントを得る。
老舗、老子製作所に頼み製作が結実する。
開発には3年ほどかかり、老子製作所の屋号”次右衛門”(ジエモン)からとって”ZEMON”と名付けられた。銅と錫の合金。錫の効果で酒質がまろやかになるという。
特徴の一つとして、一般的な板金の蒸留器よりも耐久性があり長く使える。
また、五郎丸蒸留所は地域の伝統技術を活用した取り組みによって、21年11月に経済産業大臣賞を受賞する。
熟成庫にも様々な工夫が。
屋根のスプリンクラーは一定の温度を超えると自動的に散水するという。
様々な樽、1000樽が眠る。
バーボン、ミズナラ、シェリーホグスヘッド樽、バーボンのリフィル樽などなど。
同じクラフト蒸留所、長濱との原酒交換をした後の空き樽に、五郎丸のニューメイク(蒸留したての酒)を入れている。
コラボウィスキーは”FAR EAST OF PEAT”だ。
様々な試みや挑戦を行う稲垣氏。
その斬新な発想や行動の信念とは?
スコッチを真似た作りかたでは面白くないし自分がやる意味がない。
富山県じゃないとできないものをやりたい。
羽織っているジャケットにはザ・フールとの印が。
愚者と訳される言葉。タロットカードでは常識にとらわれず前に進むという意味がある。
常識にとらわれない三郎丸蒸留所の挑戦は続く。。
三郎丸蒸留所、名前の由来は住所の名前。
そして女性の名前は、ミネフジミ(フジコではない)!
マスターからリッチで華やかなウィスキーが似合うとして、限定品のグレンモーレンジィ18年をお勧めされる。
リッチでフローラル。華やかでドライ、オーキィな樽香にバニラを思わせる麦芽香、柑橘系のフルーティさも。
さらに、白桃、ミントも感じることができる。
まとめ
日本には蒸留酒づくりの長い歴史があります。
近年多くの地酒を造る酒蔵がクラフト蒸留所を造りウィスキーづくりを始めています。
流行りや金儲けを目的に、と、うがった見方をしがちですが、ウィスキーづくりは熟成という過程があるので、軌道にのるまでかなり根気がいる作業と挑戦になります。
五郎丸蒸留所をはじめ、若いエネルギーと古来よりの知恵、土地の環境などが混じりあう時、素晴らしい科学反応を期待してしまいます。
2022年5月に開かれた東京ウィスキー&スピリッツコンペティションでも、三郎丸 ハンドフィルド 2018が金賞を受賞しています。
ますます目が離せません。
そして、ウィスキペディア26話も五郎丸蒸留所の続きですね。
では今日はここまで、
今日も夜な夜な琥珀色、また!